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1997年、シェフとして20年間勤めた帝国ホテルを飛び出し、気がついたら山中湖にいました。
かつて、帝国ホテルのメインダイニングが「フォンテーヌ・ブロー※」と名乗っていました。
プラッター(大銀皿盛り)に盛られた伝統的料理技法によるフランス調理を、給仕が盛り分けて
サービスする形式の伝統的なフレンチレストランは、時代の変化によって形態も、
その名称も変わり、大変残念に思っていました。
山中湖でオーベルジュを開業するにあたり、元帝国ホテル総料理長「村上信夫」氏を訪ね、「どこで料理をしても心は同じです」というお言葉と「フォンテーヌ・ブロー」の名をいただきました。
時代も人も常に変化を続けますが、おいしい食事と楽しい会話が幸せの入り口であることは、
今後も変わらないでしょう。
都会では、ストレスという衣を脱ぎきれぬまま、
食事をしてカフェでお茶をする。それは「東京」も「パリ」も同じで、
奇抜な取り合わせやビックリする盛り付けなど「和み」や「安らぎ」と
反対の料理があふれています。
少し郊外まで足を伸ばし、本来の自分に戻る時間が必要ではないか?
そうでなければ「和み」や「安らぎ」という「癒し」まで到達しないのではないか?そこにある「なつかしさ」や「尊さ」を感じながら、そこで「食べる」という至福の向こうに「本当」の「癒し」があるでしょう。
動物界でも「食べる」という行為は、ナイーブな瞬間であるがために、
また戦闘的にもなる瞬間でもあります。人間は、その瞬間を他人と会話を楽しむまでに高めることができました。食事のルールやマナーは文化そのものです。
オシャレをして出かけたり、大切な人と一緒に食卓を囲んだりすることは、
文化の発達した人々にとって至福の時。
この時間は最も大切にしなければならない時間のひとつです。
20数年前、フランス人シェフが日本でのフェアーなどでよく来日していました。
彼らは極東の東洋文化に神秘を感じていましたし、斬新に見える美意識を自国に持ち込み、巧みに日本文化を取り入れ表現し始めました。
日本の文化には、絢欄豪華な時代もある一方で、俳句や茶道などで言われる精神、「侘」「寂」「間」など『アンバランスによるバランスのとり方』があります。シンメトリーしかない西洋の表現の中に、彼らによってこの日本の文化が逆輸入され、今では普通に用いられるようになってきました。
「もったいない」を形に表し、文化にまで作り上げた日本は改めて素敵な国だと思います。私の半生は、まさにフランス料理を通して過ごしてきたものです。ヨーロッパに端を発する文化を通して日本人の素敵さを表現する、そんな料理を作っていこうと思います。